旅の一コマ <香港で野宿②>

21歳の秋。人生で初めて迎える海外での夜は、デリーに向かう飛行機のトランジットで寄った香港だった。

旅のノウハウもまるで無く、お金に余裕も無く、英語を話すスキルも度胸も無く、香港についての情報すら無い。何も無かった。

香港を歩き回るにあたり、両替したわずかな香港ドルと空港で見つけた日本語で書かれたガイドマップだけが頼りだった。

空港からセントラルを目指しバスに乗り、栄えていそうなところで適当に降り、全く当ても無くバックパックを背負ったまま歩き回った。
それはもう、本当にどうしたらいいのか全くわからないまま。
水1本買うのも勇気が出ないほど。

とりあえず寝るところを見つけなければ!と思い、安そうなホテルを探してウロウロさまよって、「あ、これどうだろう」と思ってもやっぱり入る勇気が出ずにウロウロウロウロ・・・。
やっと勇気を出してホテルのエントランスに入り、フロントのホテルマンに恐る恐る声をかけた瞬間、フロントデスクに置いてあった料金表が目に入り、その額が持ってた香港ドルを軽く上回ってたんで、ソーリーソーリーと退散する羽目に。

そこからまたただひたすら歩き続ける。
サークルKみたいな看板のコンビニを見つけ、やっと水を買うことができた。

でも問題は宿なのだ。

うわーんどうしようと心の中で泣きながら歩いていると、いつの間にか人気が少ないエリアに入っている。

周りを見渡すと、この辺はオフィス街なのか、会社が入ってそうなビルばかりが立ち並んでいる。
体力的にも精神的にも疲れ果てていた私は、「ええーい、もうこうなったらその辺で寝てやる!」と決心した。

空港でもらってきたガイドマップにはアジアでもトップクラスに安全て書いてあったし、野宿ならバイクで日本国内をツーリングしてた時に何回かしているので多少は心得があるんだからして!
ついさっきまで不安で何もできなかった人間が、真逆の野宿をすることを決心するというのはいささか自分でも不思議ではあったが・・・。

高速道路らしき立体道路沿いに並ぶビル。
一棟のビルの入り口がちょっと階段を昇って奥まったところにあったので、そのシャッターのところに決め、バックパックをチェーンロックで一応留めておき、寝っ転がった。

異国の地で暗い中いま自分は寝っ転がっている。いつ誰が来て襲われるかもしれない。
パスポートなどの貴重品や荷物を盗られたらマジ終わりだ・・・と、不安の種は尽きることなく浮かんでくる。

それでも身体は疲れていたのだろう、段々と頭が重くぼんやりしてきて、うとうとしかけてたその時!
話し声と共に、誰かが近づいてくる足音が!
ヤバいっ!と思いガバッと起き上がったのとほぼ同時に、ビルの壁から成人男性の影が二人現れた!

二人は警官の格好をしていて、矢継ぎ早に質問を浴びせかけてきた。

もうパニック状態の私は、二人が一体何語で話してきてるのかすら理解できない。英語なのか広東語なのか。
とにかく必死に「I’m Japanese student.」と片言の英語を繰り返した。

それが通じたようで、二人はとりあえずパスポートの提示を求めてきた。
二人がパスポートを見ながら話してるのを見ながら、「あぁ、このままどっか連れてかれて強制送還かもしれない。海外初日で旅終わりだ・・・。」などと考えていた。そんな事ありえないのに。

パスポートのチェックが終わると、今度はなぜこんなところで寝てるのかと質問を受けた。まぁ当然だ。
何とか単語を繋げて、ホテルに泊まろうとしたんだけどお金が足りなかったという事を説明した。
無事その説明は二人に伝わったみたいで、二人は「そうか」と。

さらにジェスチャーをまじえながら「でもここは危険だ」と言ってくる。なぜ危険なのかは理解できなかったけど、言われてみれば確かに周囲は外壁が工事中なのかペンキが滴り落ちた痕があったりする。
そして、「こっちについてこい」と言うので、バックパックを背負ってついていった。
歩いてる間、「飯は食ったのか?」と聞かれたのでノーと答えた。

数分歩いた後、「ここならオーケーだ」と指さされた場所は、さっきとあまり変わらない感じで、これなら別に移動させなくても良かったんじゃあ・・・と思ったけど、サンキューサンキューとお礼を伝えた。
二人はじゃあ気をつけてなみないな感じで去って行った。

はぁ、よくわからんけど助かった・・・と思い、また寝っ転がっていると、またしても足音が聞こえてくる。
ドキッとして起き上がる。誰だ。
そしたらなんと、さっきの警官が戻ってきて、「これを食べろ」と、紙袋に入ったパンを数個差し出してくれたではないか!

パンを手渡した二人は、私がびっくりしてお礼を言うのもままならなくなっているのにも構わず、軽く手を振って去って行った。

私はもう心から感動して、二人にこの感謝の気持ちをどうにか伝えたかったけど、その時の私の拙い英語では、サンキューベリーマッチと言うのが精いっぱい。

海外で向かえる初の夜に野宿する羽目になり心細かった気持ちが、まさかの親切ですっかり温かくなって、なぜだか視界がぼやけてきた。

親切な警官二人が去った後めっちゃ空腹だった私はありがたくパンをいただき、無事に朝を迎える寝る事ができた。

と言っても、警官が来た時点ですっかり深夜で、緊張からか早朝には目が覚めたので、実際寝てたのは3時間ほど。
それでも充分で、また歩き出した。

夜が明けて段々と明るくなった頃、公園を見つけたのでベンチで一休み。
残っていたパンを食べながら、早朝太極拳をしてるおっちゃんおばちゃん達を横目に眺めながらしばらくうとうとしたりした。

こうして人生初の海外での夜は明けた。
私は次の飛行機の出発時間まで時間潰しの為にスターフェリーを意味なく往復してみたりしたけど、甲板で風を受けながらなんか一つ成長したような晴れ晴れとした気分になり妙に清々しかったのを覚えている。

その後空港まで戻って無事にデリー行きの飛行機に乗った。
まぁ、降り立った初のインドでも大変だったわけですがそれはまた後日という事で・・・。

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投稿者:

ぐるじあ

日本人。10年ぐらい日本国内や海外を時々旅して時々働いて過ごしてきて、最近になって恥を忍んでそれらをネットで公開しています。信念は特にないです。

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