夢を見ました。
私がサラリーマンとして、休みもろくに取れず、精神をすり減らして、しかし安月給で働いてる時に。
広大な湿原に白く枯れ果てた木がそこら中に立って残っていて、私はそのうちの1本の木の上に座っているのでした。
太陽はもう地平線に近く、横から照らしつけてきます。
すると湿原の水がみるみるうちに水かさが増してきて、湿原は湿原というより浅い湖のようになっていき、白い枯れ木だけが水面に残っている・・・。
木の上の私はその光景を不思議に感じながら「なんてキレイなんだろう」と見つめている。

目が覚め、夢の残り香が残っている内に私は現実では既に遅刻しそうな時間だという事に気づき慌てて身支度をしたのですが、あの不思議な光景は脳のどっかにこびりついたままで、キレイだったけどやっぱ夢だよなあんな風景が現実にあるわけがないと思ったのです。

数年後、何もかもに疲れた私は仕事を辞めました。そして、仕事を辞めたらやろうと心に決めていた、北海道単車一人旅に出たのです。
ありがちと言えばありがちですが、大学生の頃からバイクに乗っていた私の長年の夢でもありました。
まだ旅の経験値が低く、ドラクエで言ったら魔法使い見習いで、「たびびとのふく」と「ひのきのぼう」ぐらいしか装備していなかったので、最初のうちは大変でした。
北の大地で、長時間の移動による疲労と寒さに耐えながら単車を走らせ、その道中で出会う大自然と美味しい食べ物と旅慣れたライダー達との出会い。大変ながらも新しい刺激の連続の日々・・・。

旅を始めて二ヶ月程経って少し慣れてきた頃でしょうか、最北端の宗谷岬から知床を越えて道東の方へ南下してきた私は、野付半島という耳慣れない半島の存在を知ることになるのです。

野付半島は知床半島と根室半島の間に位置し、26㎞に及ぶ日本最大の砂嘴(さし)。
砂嘴とは、「沿岸流により運ばれた漂砂が静水域で堆積して形成される、嘴 (くちばし) 形の地形のことである」(Wikiより)とあります。
形は、くちばしというよりも、むしろ海老のように見えます。
ながーい年月をかけて砂が堆積と侵食を繰り返し、しかしじわりじわりと砂は溜まっていき、いずれ大地となり草やトドマツなどの木が生えていったのでしょう。

そして、まだ自然の悪戯は終わりません。この砂嘴の上に生えていったトドマツ林は砂嘴の沈降などにより海水の底に沈んだりを繰り返し、やがて枯れ木となります。しかし、野付半島の内側は波が荒いわけではないので、トドマツの枯れ木はそこに留まり続けます。
こうして、トドワラと呼ばれる湿原ができあがったのです。

広大な湿原と枯れ木と湖のように静かな海面?
それは見事なまでに私がいつか夢に見た光景に類似しているのではありませんか!
あれは予知夢だったのでしょうか?もちろんその夢を見た時私は野付半島やトドワラの存在など全く知らなかったのに。

バイクで野付半島を走ると、左手にはもうすぐそこに国後島が見えます。あそこは北方領土で、近くても遠い存在。
野付半島の付け根を越えると奥にはほとんど民家はないそうです。ネイチャーセンターや漁業・土木関係の資材置場だけだとか。ちなみに、私もネイチャーセンターの係員の人に、声かけられて、ネイチャーセンターの記事に載せたいからと、長い海藻みたいなのを持たされて写真撮られました・・・。

野付半島がどうやって形成されたかが、図で説明されています。およそ3000年前からでき始めたんですって!


次はトドワラの説明の看板。
そう、ただの砂嘴の半島ではなく、さらに野付半島を魅力的たらしてめているのは、このトドワラです。
トドマツやエゾマツの枯れ木群が湿原に転がっているってのがいいのです!

別海十景、トドワラ。他の九景はどんななのでしょうか・・・。

湿原にはこのようにボードウォークができていて、この上を歩きます。(ところどころ地面におりれます。)
枯れ木はもともとは点在していたのでしょうけど、台風か波でボードウォーク近くまで押し流されてしまっています。
それがちょっと残念・・・。できれば広大な湿原に点在していてほしかった。

でも、いいっ!すごくいいっ!横たわるトドマツの枯れ木・・・。立ったまま枯れ果てているトドマツ・・・。
廃墟もそうだけど、朽ち果てたものってなぜ美しいのでしょう。なにか心の琴線に触れるものがあります。

空は青く、海面はなお碧く、さざ波一つ立てる事なく静寂の時間を奏でています。
右手に見える道路が北海道本土からのびる野付半島。
写真奥に広がるのが北海道本土。
写真手前、足元の地面はまるで葉や枝が腐って重なってできているよう。
砂地の上に落ちた葉や枝が長い年月をかけて堆積していき、このような地面を作ったのでしょう。

野付半島は移動手段が無いと訪れるのはかなり困難です。
アナタが仕事やめて、いつか夢の中で見た景色を求めてバイクや車に乗り込むのであれば、ぜひ一度目的地の一つに加えていただきたい。
次回は、野付半島で夕暮れを迎えます。私が北海道単車一人旅に撮った写真の中でも、お気に入り中のお気に入りの写真達です。あまり説明は加える事なく、ただ野付半島で見た夕暮れの美しさを見ていただきたいと思います。



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